あおい法律事務所コラム

預金と遺産分割

判例は、預金等の金銭債権は、遺産分割協議を待つまでもなく、相続開始とともに当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属すると判示してきました(最判昭和29年4月8日、最判昭和30年5月31日)。
しかし、遺言の有無や特別受益の持戻し、寄与分の考慮など具体的相続分が明らかでない段階において法定相続分に従って払戻しをすると、相続人間のトラブルに巻き込まれるおそれがあるため、金融機関は、相続人全員の署名押印がある遺産分割協議書等の提出がなければ払出しに応じないケースがあり、また、遺産分割調停においては遺産分割の対象に含めて手続きを進めている例も多いなど、判例と実務との間にかい離が生じている。
今般、預金を他の財産と合わせて遺産分割の対象にできるかどうかが争われた審判の許可抗告審で、最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は平成28年3月23日、審理を大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)に回付したとの報道がされており、預金を遺産分割の対象外としてきた判例が見直される可能性がある。

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